10月26日開催されたセミナーに参加し、ワイン醸造に関する興味深い話と、ユーモア溢れる意外な一面を垣間見られたのでご報告します。
セミナー会場にむかうドミニクの大きな背中!
新樽200%の返上
樽の魔術師との異名をもつドミニク。
醸造時に新樽を2度使用する独特の手法をとったことから「新樽200%」との異名をもつドミニク・ローランですが、今後この名前を返上すると宣言!
長年の研究の結果、上質な樽材を用いることで旧樽であっても新樽と同じ、あるいはそれ以上の効果が得られることがわかったそうです。さらに旧樽のほうが樽に移した最初の時点から安定した品質が保てるとの話も。
とにかく最悪なのはクオリティの悪い新樽を使ったとき。「ワインのクオリティは地獄に落ちる。これは焚き火に使うしかないね!」とジョークまじりに説明していました。
つまり、熟成時に使用する樽にはとにかく上質な樽材を用いることが重要。上質なワインを完成させるためには樽の新旧が大切なのではなく、材質へのこだわりが大切。そういう意味でも彼の研究成果「マジック・カスク」は完璧だそうです。
というわけで、これまで 「新樽200%」との異名をもつ「樽の魔術師」ドミニク・ローランは新樽へのこだわりから脱却。上質な旧樽も使用することで、彼の理想とする「昔ながらのブルゴーニュのワイン」完成へさらなる自信を見せていました。
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満席のセミナー会場、さすがです。
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熱心に語るドミニク
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セオリーは「自由、シンプル、自然のまま」
「私のワインは数年前と今では違います。現在のワインつくりのセオリーは『自由、シンプル、自然のまま』。ワインに身を任せ、自然な方法で美味しいワインを造っています」と語るドミニク。
今回のセミナーで強調していたのは
●品質、醸造のすべてにおいて「自然」であること
●昔ながらのブルゴーニュの味を実現すること
の2点でした。「新樽200%」「樽の魔術師」と形容されていた数年前とはワインつくりに対する取り組みもずいぶん変化している様子です。
ドミニク・ローラン語る「2004年のドミニク・ワイン」
「2004年は『真実を表すヴィンテージ』と言える。
ブルゴーニュの多くの生産者は2003年の猛暑で大幅な収穫量減となったため、その穴を埋めるべく2004年で収穫量を上げた生産者が多数いる。
ワインは手を加えるほど頑なになってしまうものだ。
2004年は難しいヴィンテージだったが、補糖は一切せず自然のままのワイン造りにチャレンジした。
私は昔ながらの味を大切にするため、ヴィーユ・エ・ヴィーニュ(=高樹齢の葡萄)に重きをおいたので、2004年も濃縮した満足のいくワインが完成した。」(byドミニク・ローラン)
当日、2004年ヴィンテージをすべてテイスティングしてきましたが、いわゆる新樽のガチッとしたニュアンスが押し出されたものはなく、産地ごとの本来のポテンシャルが最大限に引き出されていたのが印象的でした。
これまでのドミニクワインの印象は果実の凝縮感とそれと戦う樽のニュアンスで、新しいヴィンテージのワインを飲むのは正直つらかったのですが、2004年は今飲んでも素直に美味しい、上質なワインだと納得できるものでした。
素顔のドミニク・ローラン
「分刻みのスケジュールにつき、一緒に写真を撮る時間はありません」との事前通達が出るほど、彼の行くところには黒山の人だかり!超人気スターなのです。
しかも、「天才・鬼才」の名を欲しいままにする名醸造家。いかにもとっつきにくそうな気難しい醸造家のイメージを持っていました。
ところが、話しはじめたドミニクはとってもにこやか。しかもプロフィール紹介の間、スクリーン上の自分の顔にペンライトでひげを描いて遊ぶお茶目ぶり!ずいぶん言われているイメージとは違う気さくで楽しそうな人です。
セミナー終了後、幸運なことに一緒に写真まで撮れちゃいました!