味わいの比較分析レポート
(1)ドメーヌ・レイマリー・セシ ブルゴーニュ・ピノノワール
ヴィエイユ・ヴィーニュ キュヴェ・アンドリュー2005
●スモーキーで、凝縮した味わい
●低めのトーン、詰まった成分、濃厚な果実味、男らしいワイン
●クロ・ド・ヴージョが本拠地の、がっちり骨格のあるタイプ
●現代的スタイル、果実み凝縮ワインが好きな方向け
ボルドー通の方なら気がついたかもしれません、ラベルの紋章はボルドーのポムロール、レイマリー家の家紋になります。
彼は長期熟成に向いたワイン造りを目指し、樽の使い方や収量などはACブルゴーニュにも特級にもあまり差をもうけず、全てのワインを手間惜しまず醸造しています。このACブルゴーニュはキュヴェ・アンドリューと名付けられ、ラベルには表記されていませんが古木(ヴィエイユ・ヴィーニュ)のブドウを使用している為、他のACブルとは別格の濃縮感、コルクも長く上質なものを用い、レベルの高いワインです。
造りとしては、ステンレスタンクを主とする多くのブルピノに対して、こちらは新樽1/3 1年使用樽1/3 2年目使用樽1/3(18ヶ月)で樽熟成をし、ノンフィルターでビン詰めをする等こだわりが見えます。
☆☆テイスティングコメント☆☆
まず色合いがかなり濃い事に驚きます。グラスに注ぐと予想通り、濃厚で凝縮した果実の香りが漂います。どっしりとして少し曇り気なスモーキーさを持ちながら、とにかくその熟した果実の香り、プルーンのような香りを前面に感じ、そして更に樽からくるヴァニラのニュアンス、奥のほうにはスミレの香りを感じました。
口に含むと、しっかりとした果実味です。カシスやブルーベリー等の果実の香りを中心に、樹齢の高い樹から作られた凝縮したエキス分、アフターに残るスモーク感とほのかに香ばしい樽のニュアンス、きめの細かいピノならではのタンニンと粘性の高さ、酸も渋みも甘みもそれぞれしっかりと主張し、ふくよかな口当たりです。
近年のブルゴーニュの流れとしては新しいタイプの造り方、アルマン・ルソーやデュガもその傾向にあると言われていますが、果実味が前面に現れるボリューミーなタイプが増えてきているといわれています。(パーカーをはじめ消費者の求める味わいの流れなのかもしれません)
昔ながらの、酸が強くテロワールの繊細さを求めるタイプに対して、パワフルで飲み応えがあり分かりやすい美味しさ。どちらかと言うと、ボルドーファンやローヌファンにも気に入られるタイプかもしれません。(たださすがブルピノ、どこか軽やかさがあり疲れた身体にも馴染みます)
2005年ヴィンテージという事もあり、その濃厚さが更に際立っていますので、鴨やジビエ、ブッフ・ブルギニヨン(牛肉のワイン煮込みブルゴーニュ風)なんてしっかりしたお料理を合わせたくなります。
(2)ドメーヌ・プリューレ ブルゴーニュ・ピノノワール 2006
●心まで素直になれる、純粋ワイン
●高いトーン、純粋でクリーン、知的でキュートな女性的味わい
●サヴィニー・レ・ボーヌの元村長さんが造る素朴でピュアなワイン
●昔ながらのブルゴーニュ、素直にピノ・ノワールが好きな方向け
ドメーヌ・プリューレは、8年間サヴィニー・レ・ボーヌの村長さんだった方が、「村長として恥かしくない様丁寧に造った」というこだわりのワイン。(知的階級も高く、且つ地元の人間に認められる存在であることの証です)コストパフォーマンスが良く、伝統的に丁寧に造られたワインですので、その味わいは確かです。
☆☆テイスティングコメント☆☆
以前飲んだ時と印象は変わりませんが、レイマリー・カシのワインと同時に飲み比べをすると、よりキュートな香りと素直な味わいが際立つように思います。ミネラル感、酸味をはっきりと感じ、とにかくピュアで透明感のある味わいです。
香りの中心は赤い小さな実の果実。カシスや苺、小梅の香り。口に含むとミネラルを感じ、クリーンな印象。綺麗な酸を感じ、アフターには、ミネラルや鉄分、乾いた土の素朴さを残します。よくよく香りを香っていると、カツオ梅のような、コクのあるピノの甘みある香りが感じられます。
フルーティフルーティなピノではなく、昔ながらの優しいピノというのでしょうか。華やかさより、素朴さがあります。ただ、この3点の中では一番キュートで可愛らしいイメージはあるかもしれません。素直に本当に、美味しいです。一番多くの人に好まれるタイプだと思います。
お料理はどんな季節にも、どんなお料理にも、合わせられるワインです。焼き魚や天ぷら・串揚げ、鰻、煮物、お刺身やお鮨のような和食、サヴィニーのピノはお醤油との相性が特に良い気がしています。
(3)ドメーヌ・ユヴェール・ヴェルドロー オート・コート・ド・ボーヌ 2001
●ほっとする、気の落ち着けるワイン
●クラシカルで上品、熟成感・飲み頃感のある味わい
●ヴォルネー・ポマールに一級畑を持つコントラフォンの弟子(ビオディナミ)
●熟成感のある味わい、ミネラル感の好きな方向け
ドメーヌの当主ユヴェール・ティエボーさんは、フランスのビオディナミ・醸造業界で最も注目されている若手醸造家さん。若手優秀生産者のコートドボーヌ代表として、1位のトロフィーも獲得しまいます。ビオディナミの師匠と呼ばれる有名なムルソーの造り手、コントラフォンの弟子であり、ルロワやドーヴネとは畑の管理や醸造などの相談をし合う程。自然の力を100%引き出した優しい造り、素晴らしいです。
☆☆テイスティングコメント☆☆
すーっと身体に溶け込んでいく優しい熟成感のある旨味、色合いにも熟成感がみられます。赤い小さな実から甘いハーブのような香り、じゅわっと舌の上で和風ダシのような旨味ある香りを感じ、その後すーっと身体に入っていき溶けてなくなっていきます。
タンニンは極めて滑らかでシルクのような舌触り、コクがあり、アフターにはミネラル感が残り、どこか涼しげで、透明感を感じるワインです。
熟成したワインでも、複雑感というよりはシンプルで素直なタイプ。繊細で上品。果実味と言うよりは少し鉱物的な、ミネラルを感じるワインです。
この優しい旨味成分の香りは熟成ワインに共通する美味しさで癖になります。ほっと、気の落ち着けるワインです。
こちらもどんなお料理にも合いそうです。比較的シンプルなお料理や、和食でも優しい味わいのもの。かつおだしを効かせたお野菜の蒸し物、さらっと煮付けたカレイの煮付け、ロールキャベツ、今の季節ならお鍋などにも。 |